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2008年10月 5日 (日)

『東京展』を見た

幼馴染のY子のお兄さまは画家、村岡千穐氏。WSK学部在学中、妹(Y子)の宿題のデッサンを手伝ったことから本格的に絵を描きはじめ、ついに人生航路を変えたという方だ。今回、『東京展』で最高賞を受賞されたというので、Y子と一緒に上野の「東京都美術館」に行った。中国の写真を上手に使った知的センス溢れる素晴らしい作品、さすがだ。

同じ階に絵本のコーナーがあった。丁寧に作られた手作り絵本が並んでいる。そのなかのふたつが印象に残った。

まずは『血のレストラン』。真っ赤な手染めの薄布で覆われた表紙を開けると、夕暮れ時の森陰に血のレストランが開店する。今夜のお勧めは小さな女の子の血で作ったスペシャルドリンク。暗くなるに従って老若男女うちそろってやってきてレストランは大繁盛。これからどうなるんだろう……とページをめくっていくうちにやがて森の下草のなかで蚊にさされて痒くて泣いている女の子が…。ちょっと怖い、気味が悪いということは、子どもにとって魅惑的、それなしに子供の夢を育てることはできないのかもしれない。

もうひとつはお母さんが大嫌いという内容のもの。表紙に母親と女の子が盛装して撮った白黒写真が貼ってある。ページをめくると次々と飛び出してくる母親への不満。何もかも型に嵌めようとした、やりたいことをさせてくれなかった、悲しい時も嬉しい時も気持ちを理解してくれなかった…そして、お母さんは私を生んで幸せだったの、という問いかけで終わっている。これを読んで子供はどう思うだろう。例えば、お母さんが自分を道端に捨てたとか、ご飯を食べさせてくれなかったとか、極端にいって身売りさせられたとかなら、怨みも大きかろうと思うが…。お母さんは自分を理解していないようだったけど、やっぱり私を愛していたんだね、大人になって分ったよ、という終わり方ならノーマルだけど…。「大嫌い」といい切ってしまうのもいかがなものだろう。何しろ絵本なんだから、もう少し優しくてもいい。

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コメント

それって童話? 私小説みたいね。最近、娘と大笑いしたのですが、子供の時、おばちゃんが買ってくれるというのに私が絶対駄目だと言ったキラキラのサンダルがあったそうです。言われてみれば思い出し、妙に大人っぽいのと品のない感じがいやで買わせなかったのです。娘にはシンデレラの靴のように思えてしばらく私を相当恨んでいたそうな。もちろん、いまはわかるそうです。私は恨まれているなんてぜんぜん気づかず、母親と娘のいさかいなんてそんなものではないかしら。もっとも、笑い事にできない事件というのも確かにありますが、それを童話にすることはむずかしいでしょう。童話は人の心の機微にそっと触れるものでないとね。

投稿: kaz | 2008年10月 5日 (日) 18時11分

シンデレラの靴ね…。買ってもらって、どこにでもあるものだということを知ってしまうより、美しい靴と思い続けていた何年間かがとても貴重だったかもしれないですね。
童話を書くことが難しいのは、童心を失わず、それでいて大人の視線でしっかり物事を見つめなければならないということですよね。解決のないものが今時の流行で、子どもに自由な判断を促すことを最善とすることが、私にはかなり無理があるように思えました。

投稿: | 2008年10月 5日 (日) 22時40分

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