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2012年2月29日 (水)

高校同期会

 卒業以来はじめての同期会に出席。3次会まで流れて、懐かしい昔話に花が咲いた。集まったのは50人ばかり、亡くなった人も何人か紹介された。そのなかにS君の名前があった。
 S君とは1年生の時に同じクラスだった。よく彼に誘われて学校帰りに品川神社へ行った。京急沿線の駅を降りて少し歩くと品川神社、そこにはごつごつした溶岩のような石が積まれた「お富士さん」と呼ばれる小高い丘があった(今でもある)。富士山信仰の賜物、富士講の心の拠り所だ。
 大きな石の鳥居近くに登山口があった。曲がりくねった坂道の途中に「三合目」とか「八合目」などと刻まれた古い道標が立っていた。あっという間に上り詰めてしまうのだが、頂上は見晴らしがよく解放感があった。
 彼は校門を出た時からずっと話し続けているのだが、さすがに登山中は寡黙で、頂上に落ち着くとまた話の続きをはじめる。彼の話には、共産主義、マルクス、社会主義、アメリカ、戦争、というような単語がひっきりなしに出てきた。当時の私はいったい何を考えていたのか、今は少しも思い出すことができない。彼がなぜ、たいして見栄えもしない私みたいな女子学生を誘ったのかも疑問だ。彼はいつも「人類の理想は共産主義だよ、そう思わない」と聞いた。私はきっと曖昧に「そうね」と答えていたのだろう。S君は数年前に亡くなったらしいが、生涯、その考えを貫き通したということだった。
 今、記憶を手繰り寄せれば、ひとつだけ鮮明に思い出す風景がある。「お富士さん」の頂上から眺めた東京湾だ。天気の良い日は空と海が真っ青で、大きな船が品川沖をゆっくりと進んでいた。主義主張の話が途切れると、黒い船体は貨物船、白いのは客船だなどと他愛なくしゃべりあった。
 S君も亡くなり、今は海も消えてしまった。…46年の歳月が重い。

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