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2013年3月 9日 (土)

『ジェーン・エア』シャーロット・ブロンテ

 ずっと前に500円で買って、そのままになっていたDVDを(やっと)見た。1944年のアメリカ映画(それにしても1944年にこんな映画を作っていたなんて…日本は「贅沢は敵!」だったのに)。原作から除外されている部分(従兄弟のセント・ジョン牧師に求婚される)はあるが、仕方がないだろう。
 ジェーン役はジョーン・フォンテイン、1917年、父親が日本で仕事をしていたので東京虎ノ門で生まれた。95歳。4回結婚している。『レベッカ』ほか多数主演。姉のオリヴィア・デ・ハヴィランドも女優、1916年生まれで96歳。ふたりはともにアカデミー主演女優賞を獲得した大女優だが、ひどく仲が悪いことで知られていたとか。
 映画は映画で良いけれど、原作はシャーロット・ブロンテの小説『ジェーン・エア』。
 家庭教師として住み込んだジェーン・エアは館主ロチェスターに求愛され、結婚しようとするが、彼にはジャマイカから連れてきた妻バーサがいることがわかり結婚は暗礁に乗り上げる。気が狂ったバーサは館に放火して焼け死んでしまうのだが、作者はあくまでも凶暴な狂女として描いている。
 それに疑問を感じ、1966年に長編小説『サルガッソーの広い海(Wide Sargasso Sea) 』を発表したのはジーン・リースだ。サルガッソーはカリブ海の外海、藻が繁って海面を覆っているという。
 ジーン・リースは、もの言わぬ(言えぬ)バーサの立場から、当時のイギリスの植民地、西インド諸島の様子を物語るが、シャーロットの語り口とはまったく違っていて(もちろん時代も違うのだが)、南国の色彩が感じられる(ちょっとゴーギャンの絵を見るような)文体だ。
 バーサ・アントワネットの家系は、代々、狂気の人間が多く、その母もまた狂女だった。バーサはクレオール(植民地で生まれたヨーロッパ人)の娘として登場する。ロチェスターはカリブ海の砂糖プランテーションで財を成したイギリスのジェントルマン。ふたりはジャマイカのスパニッシュ・タウンで結婚する。結婚したときの様子や、酒におぼれながら次第に狂っていくバーサの内面などが、鮮やかに描かれている。そしてバーサは知らぬ間に暗いイギリスで暮らしていて、館の中でジェーン・エアにも出会っている。夢のように不思議な悲しい物語だ。
 クレオールはカリブの国では黒人奴隷を使う立場だったが、ヨーロッパ本国の人たちからは差別されていた。ジーン・リースの父はイギリス人医師、母は西インド諸島のクレオール。1890年に生まれて1979年に89歳で没した。

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