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2014年1月 5日 (日)

片山廣子とおみくじ

 元日の朝、近所の神社へ初詣にいく。近所とはいっても源氏が旗揚げをしたという言い伝えのある古い神社なので参拝者は長蛇の列だ。
 人だかりのする社務所の前で、男の子がおみくじをひいているのを見て、片山廣子の随筆、『迷信の遊戯』や『うちのお稲荷さん』を思い出した。そのなかに「私はおみくじが好きだ」と書かれているのだ。はじめて読んだ時、神だのみなどには無縁だろうと思われるあの聡明な片山廣子がおみくじが好きだとは……と、かなり印象的だった。
 よせばいいのに、ふと私もひいてみようという気になって100円玉を出す。おみくじの筒はふたつあり、奥に置かれていたものに手を伸ばしてがらがらとふった。でもなかなか棒が出てこない。少し頭が出てきたのでむりやり引っ張り出すと「小吉」とでた。
 あーぁ、と思う。金運も仕事運もまるでなく病は重い、などとはっきり書かれている。正月早々、なんてこと! 木に結び付けて厄払いしたと自分に納得させて帰路についたが、歩き始めて気がついた。おみくじは凶や小吉などは出にくくしてあるに違いない、と。ほとんどが大吉か中吉だということは、それらはきっと一回ふれば出てくるようになっているのだろう。おみくじだって人間が作ったものなのだから……と、さらに納得して、おみくじのことは忘れることにした。
 片山廣子はいわゆる馬込文士村の作家で歌人でもある。松村みね子というペンネームでアイルランド文学を中心に翻訳家としても活躍した。芥川龍之介の最後の心の恋人だったといわれ、堀辰夫の小説のモデルにもなった美しい貴婦人である。外交官の娘であり夫は日銀理事、優秀な息子と美しい娘、でも戦争ですべてを失い、晩年は孤独だった。以前、連載していたエッセイのために、著書をほとんど読み経歴なども調べたが(2012年に出版された全歌集も読んだ)、とても魅力的な素晴らしい人で、いつかもっと詳しく書きたいと思いながら……怠けている。

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