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2017年12月20日 (水)

歌舞伎

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先日、国立劇場に歌舞伎を見に行った。吉右衛門、菊之助、雀右衛門などが登場。歌舞伎は小学生の頃から祖母に連れられてよく見に行った(ほとんど毎月)が、今思えば子どもの頃の印象は、舞台が華やかできれい、女性(しかもお姫さま)に見えるが実は男性らしいという不思議、それに幕あいで食べるお弁当の珍しさ、という程度だったが、さすがに高校生ともなると古典歌舞伎の面白さも理解し、そのうち新作歌舞伎にも興味を持った。20歳ごろに見た二月堂のお水取りを題材にした『韃靼』(松緑と梅幸が演じた)は素晴らしく、翌年、奈良までお水取りを見に行ってしまったくらいだ。近ごろは歌舞伎を見ることもまれだが、今回は歌舞伎好きのA子が誘ってくれたので出かける。吉右衛門は好きな役者だ。何十年も前に『一谷嫩軍記』で敦盛の身代わりに我が子を差し出した熊谷直実に扮した吉右衛門が、本当に涙を流すのを見た。その時、私は花道のそばに座っていた。流れる涙をそのままに花道を引き上げていく姿を見て、思わず胸がいっぱいになって私も泣いてしまった。今回は通し狂言『隅田春芸女容性』、それもまた、妻の弟が自分のために工面してくれた金を、そうとは知らずに殺して奪ってしまった由兵衛の苦悩が描かれるのだが、演じる吉右衛門は涙が止まらないという感じだった。私は本物の涙を流す歌舞伎役者は吉右衛門以外に見たことはない。もしかしたら見たことがないだけで他にもいるのかもしれないが、最初見た時、感動するとともに、正直言ってどこか違和感があった。私としては、歌舞伎は人形浄瑠璃と切り離して考えることができず、厚塗りの化粧や型にはまった仕草などが何となく人形のようで、演じる人はむしろ人間らしくない方が良いような気がしていた。科白や仕草だけで観客を泣かせるのが伝統芸能の歌舞伎だなどと思っていたのだ。そういうわけで、その時はあまりにも現代的すぎると感じてしまったのだが、登場人物が人間らしく見えない方が良いなどということは決してないのだ。やはり吉右衛門は名優である。

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